自分を恥じた瞬間…
9月10日15時21分、
震災から、あと1日で「6ヶ月」になろうとしていた時の事です…
石巻の改修工事の現場にいる時に、胸ポケットに入れていた携帯の着信音がなりました。
携帯の画面を見ると、家が地震の被害にあったお客様からでした。
そのお客様の家は、幸いにも被害にあった中でも軽度の被害で済んだので、
「もっと、ひどい被害にあった方のお宅から工事してください。
私の所は、生活するのには支障がないので、最後の最後に工事を
してくれればいいですので…」
と、言われていたのですが、既にそのお宅に伺ってから5ヶ月経過
してしまっていました。
工事の催促の電話で、あまりにも私からの連絡が無くシビレをきらして、
ご立腹されお叱りの電話なんだろうな〜と思いました。
正直な気持ちを言えば、携帯の画面を見ながら電話に出るべきかを、かなり考えました。
ですが、いくら忙しくても、お客様からの電話に出ないのは失礼ですし、
やってはいけない事ですので、覚悟を決めて携帯の通話ボタンを
左手の親指で押しました。
少し手が震えていました。
電話に出た瞬間から、お詫びの言葉をお客様に投げ掛けました。
どうにかしてお客様の怒りを和らげ、今の現状を理解していただき
もう少しだけ工事を待って頂くことはできないか。という一心でした。
ですが、お客様からの一言で自分が恥ずかしくなってしまいました。
「伊藤さん、忙しい時に電話してすみません。昨日の夜、家族で伊藤さんの
話題になって、忙しすぎて体でも壊したのではないか?と思って心配で電話
してみたんですよ。。。元気そうで安心しました。」
という内容だったのです。私が電話に出る前に想像してしまった事が
恥ずかしくなってしまったと同時に、お客様に失礼な気持ちを抱いて
しまったと反省しました。
お客様は、こんな私の事を心配してくれて電話をくださったのに、
私は自分を正当化しようしか考えていませんでした。
そして
「家の工事のことは、伊藤さんだけがたよりだから、1年だって2年だって
待っているから、まずは自分の体に気をつけて頑張ってください。」
というお言葉を頂き、電話を切りました。
帰りの車の中でその言葉を思い出して涙しました。そして震災から半年間、
休みも無く忙しい毎日を送って来て、心が折れそうになっていた私を
奮い立たせてくれる言葉でした。
今でも、思い出すと目頭が熱くなってしまいます。
そのような、ありがたいお言葉をたくさんのお客様から頂き、私はどうやって
お客様にできるだけ早く工事を提供することができるのかを今まで以上に
真剣に考えました。
今以上に効率を上げる方法を考え、社員とも話し合った結果、効率を
下げている原因が判明しました。
3月11日、宮城野区の出花にあった伊藤建設の事務所も津波の被害に
遭いました。そのことで現在は仮事務所で仕事をさせて頂いています。
18人の社員がかなり手狭な事務所で、肩と肩をぶつけ合いながら仕事を
している状態ですし、自分の机はおろか書類なども整理するスペースも無く
書類やカタログなどは山積みの状態です。
何をするにも、何かを探すのも時間がかかり、時間がムダになっていることが
仕事の効率を下げる一番の原因なのではないかということになりました。
「工事が遅れる事を環境のせいにするな!」
という意見も出てくると思いますが、実際そのような環境では仕事が
はかどらないのは事実です。
私たちのやるべき仕事を、スムーズにこなしていけないということは、
最終的にお客様を待たせることになってしまうと思います。
そこで…
「こんな時期に自分の会社か(怒)」
とお叱りの言葉を頂くことを覚悟で、年内中に新社屋を完成させる
ことを決意しました。
新社屋が完成すれば、効率が格段にアップして今の何倍もスピーディーに
仕事をこなすことができるようになると私は確信しているからです。
今現在のことを考えれば、現状のままなんとか仕事をこなして行くという
選択肢も良いのかも知れません。ですが、私の会社の使命は
『安心して住まうことのできる家を提供し続ける』
ことです。
宮城県内を見てもまだまだ改修工事は終わっていませんし、これから
若い世代の方々が、夢や希望をもって自分の家を建てるという思いを
実現にするお手伝いをさせて頂く為にも、新社屋を完成させるのは
今だと決断しました。
実際、震災から210日過ぎた現在も、私たち建築に携わる人達の
現状は変わっていません。
今のところ、私の考えでは何年後に震災前の落ち着きを取り戻せるのかも
解らない状態です。
正直私も2日間くらいゆっくり寝てみたいという欲求もあります。
ですが、ある程度の形が見えてくるまで、私は頑張っていきたいと考えています。
今回の大震災で被害を受けた方々に私ができることは、ほんの小さなことかも
知れません。ですが、私のできることは
『安心して住まうことのできる家を提供し続ける』
ことです。
野田総理が総理になる前に共同記者会見で言っていた…
「政権運営とは、雪の坂道を雪だるまを押していくようなものだ。
足下はおぼつかず、そして人手が要ります。上に上に上がるに従って
大きくもできます。でも、内輪もめしたり、あいつが嫌いだ、こいつが
嫌いだとか言ったり手を抜いたら、雪だるまは落ちてしまいます。
中略
一人の豪腕ではできません。だれかスーパースターをつくたってダメ
なんです。だから全員野球なんです。これからはみんなで押さえなければ
いけないふうに思います。」
...
この言葉を聞いたとき、
伊藤建設でも社員全員で手を抜くこと無く、そして自分のできることを
精一杯やり、一致団結して同じ方向をみて一歩一歩、歩み続ける事こそが、
今やるべき事だとあらためて気がつきました。
ですので、社員全員が仕事をしやすい環境を整えて、みんなの足踏みを
揃える事、そして歩みを止めない事こそが、今私たちができる事ですし、
必ずお客様にとって良い方向に進むのではないかと今感じています。
私たちも一歩ずつ確実に前に進んでいきますので、そんな私たちと
ぜひ一緒に歩んで頂ければと思います。
2011年10月11日 21時37分
卸町の仮事務所にて。
![]()
追伸:
震災から210日経過した現在の状況は、地震の被害にあったお客様の工事は
通常の生活できるまでの工事はすべて終了できることができました。
現在、順次追加工事などの手配や工事を進めさせて頂いております。
新築工事に関しても、震災前に受注した工事の8割は完了しており、
少しづつですが、新築の受注も受けられるようになって参りました。
ですが、なかなか順調に進まない部分もまだまだあります。
ご迷惑をおかけしている多くの方々に、この場をお借りしてお詫び申し上げます。
>>> 2011 ラストメッセージへ...












